新型コロナウイルスの変異株 アルファ株 前編

新型コロナウイルスの変異株「アルファ」とは、最初イギリスで大流行した変異株で、日本ではまず関西地域で流行しました。国立感染研究所(感染研)の報告によると、4月下旬には、大阪、京都、兵庫ではコロナウイルス感染者の8割超がアルファ株と推定されました。
アルファ株の特性についてまとめました。

 

アルファ株はどこが変異した?

アルファ株の主な変異は「N501Y」と表記されます。これは、新型コロナウイルスの外殻のスパイクたんぱく質(とげとげした形のもの)のアミノ酸のうち501番目がN(アスパラギン酸)からY(チロシン)に変わったものです。
実は、新型コロナウイルスの外殻のスパイクタンパク質のアミノ酸は1,273もあるのですが、このうちの319番から541番までのアミノ酸が、ヒトの細胞の表面にあるACE2受容体とくっつくことで、ウイルスは細胞の中に入ることができます。
つまり、319番から541番までのアミノ酸が、ヒトの細胞のACE2受容体とよりくっつきやすく変異すると、感染力の強い変異株が登場してしまうのです。

 

NからYへ変わったら、どうなった?

たくさんのアミノ酸がある中で、501番目がN(アスパラギン酸)からY(チロシン)に変わっただけでどう違うの?と思われるかもしれません。
カナダのブリティッシュコロンビア大の研究チームによると、変異した501番目のチロシンは、ヒトの細胞表面のACE2受容体アミノ酸のチロシンとリシンの間にちゃっかり入り込むそうです。
ちなみに、なぜチロシンはACE2受容体の中に入り込みやすいかというと、チロシンには炭素原子が六角形になるベンゼン環があるため、ウイルス側のチロシンのベンゼン環とACE2受容体側のベンゼン環が互いに引き合うからだと考えられています。

 

アルファ株の感染力は従来株の1.32倍

1人の感染者が他の人に移す人数を表したものを「実効再生産数」と言います。従来株の実効再生産数は0.94でしたが、感染研によると、アルファ型の実効再生産数は従来株の1.32倍になるとしています。
しかも、1.32倍はあくまで平均値。感染研は、実効再生産数には地域によって差があり、1.21倍程度のところもあれば、最大1.68倍にも跳ね上がるところもあるとしています。
この数字だけでも、かなりインパクト大ですが、アルファ株が最初に流行したイギリスからの報告では、実効再生産数は従来株の1.7倍にもなるとの報告がありました。
感染研の予測では、従来株からアルファ株への置き換えが着実に進んでいるとのこと。強い感染力のアルファ株が流行すると、今まで以上に感染を抑えることが大変になりそうです。