新型コロナウイルスの変異株 アルファ株 後編

新型コロナウイルスの変異株「アルファ」について、前編に引き続き、その特性と感染状況をお伝えします。

 

アルファ株は重症化のスピードが速い

前回、アルファ株は従来株に比べて、実効再生産数が1.32倍にもなると、その特性を説明しましたが、アルファ株の特性はそれだけではありません。
アルファ株は従来株よりも重症化するスピードが速いと言われています。
新型コロナウイルス感染症の恐ろしさは、本人も気づかないうちに重症化すること。ふつうに会話ができていた患者さんが、突然症状が悪化し命を落としたというケースも報告されています。
きちんとしたデータの裏付けはまだありませんが、現場の医師によると、従来株では発症から重症化するまでの期間がおよそ1週間だったのに対し、アルファ株では4~5日と、重症化のスピードがはやまっているそうです。
そのため、感染者数の増加だけでなく、重症者の増加が医療現場への大きな負担になっています。

 

アルファ株は誰でも重症化する?

従来株では、一般に若い人や基礎疾患のない人は軽症ですみ、高齢者や基礎疾患のある人は重症化しやすいと言われていました。
ところがアルファ株では、40代や50代の基礎疾患のない人でも重症化するケースが報告されています。
基礎疾患がない人でも安心はできないのです。

 

アルファ株は子どもがかかりやすい?

従来株は、子どもの感染者が少ないのが特徴でした。実際、インフルエンザの流行の拠点となる幼稚園や小学校、中学校での新型コロナ感染症のクラスターはほとんど報告されていませんでした。
ところが、アルファ株の流行により、国内でも子どもが集まる施設でのクラスターが発生しています。そこでアルファ株は従来株とは違い、子どもに感染しやすいのでは?といった疑問が出てきます。
けれども、アルファ株が大流行したロンドンでの従来株とアルファ株の大人と子どもの感染者の割合を比べてみたところ、特に子どもの割合が増えたということはなかったそうです。
アルファ株が特別に子どもに感染しやすくなったのではなく、従来株よりも感染力が強いために、大人よりは感染しにくい子どもでも感染するようになったと考えられています。
また、子どもは感染しても、ほとんどの場合、無症状か軽症という特徴は、従来株でもアルファ株でも変わらないようです。

 

世界中に蔓延しているアルファ株

WHO(世界保健機関)の2021年5月25日時点での報告によると、世界中196の国や地域のうち、アルファ株の感染報告があったのは155にものぼります。
アルファ株は、2020年10月頃、イギリスで最初に見つかりましたが、その後、2021年2月~3月までに、イギリスではほぼ従来株からアルファ株へ置き換わったと言われています。
最初の発見から、わずか4~5か月で従来株を駆逐してしまったのなら、今後、アルファ株の感染報告は155の国や地域よりも、さらに増える可能性は大きいといえるでしょう。