新型コロナウイルスの変異株 ベータ株

最初イギリスで大流行した新型コロナウイルスの変異株「アルファ」の次にニュースになったのが、南アフリカで発見された「ベータ」株です。日本でも検疫などでベータ株の感染者が報告されています。ベータ株の特性についてまとめました。

 

ベータ株はアルファ株より変異が進んでいる?

イギリスで最初に見つかったアルファ株、南アフリカで最初に見つかったベータ株、それぞれに変異したものだと思っていませんか?
ところが、アルファ株とベータ株には共通点があるのです。ともに「N501Y」の変異があるということです。
なのになぜ、アルファ株とベータ株に区別されているかというと、ベータ株の主な変異は「N501Y」に加えて「E484K」の変異もあるからです。
「E484K」とは、484番目のアミノ酸が、グルタミン酸(E)からリシン(K)に変わったという変異です。

 

ベータ株の感染力は従来株の1.5倍?

アルファ株の前編で説明したとおり、新型コロナウイルスの外殻のスパイクたんぱく質のアミノ酸のうち319番から541番までのアミノ酸はヒトの細胞の表面にあるACE2受容体とのくっつきやすさに関係しています。
厚生労働省 新型コロナウイルス感染症対策推進本部のまとめによると、ベータ株の感染力は従来株の5割程度高い可能性があるとのことです。

 

死亡リスクが高く、ワクチンが効きにくい可能性が…

「E484K」の変異株の特徴として、従来株に比べて免疫やワクチンの効果を下げる可能性があることが指摘されています。免疫力が下がると、それだけ重症化しやすくなります。前述の新型コロナウイルス感染症対策推進本部のまとめによると、ベータ株は従来株に比べて、入院時の死亡リスクが高い可能性があるとのことです。
また、ワクチンの効果を弱める可能性も指摘されています。ただし、「E484K」の変異があっただけでワクチンがまったく効かなくなるわけではないとの報告も。たとえばファイザー社のワクチンでは、モデルウイルスを使った非臨床試験の結果、変異株にも一定のワクチンの効果はあるとされています。

 

111の国と地域で確認!

2021年5月25日のWHO(世界保健機構)の報告書によると、196の世界中の国や地域のうち、111の国や地域でベータ株が確認されています。155の国や地域で確認されたアルファ株に比べると少ないものの、変異株の広がりレベルでは、アルファ株に次ぐ多さになっています。
しかも、前の週に比べてどのくらい広がったかで比べてみると、アルファ株は4増えたのに対して、ベータ株は5増えており、直近1週間ではアルファ株よりも勢いを増しているようにもみえます。
日本ではあまり話題になっていないようですが、だからといって安心はできません。