変異株について ワクチン

新型コロナウイルスの変異株については、感染力、重症化リスクの高まりなどが気になるところですが、もう一つ、忘れてはならないのがワクチンの効果です。変異箇所によっては、ワクチンの効果を低減させるとも言われていますが、その影響についてまとめてみました。

 

モデルナ社製変異株ワクチンの臨床結果

「E484K」の変異があると、免疫力やワクチンの有効性を低下させる可能性があると説明しましたが、そうなると、「E484K」の変異があるベータ株、ガンマ株への効果が気になるところです。
2021年5月7日に発表されたモデルナ社の変異株ワクチンの臨床実験の結果をご紹介します。
モデルナ社では、ワクチンを2回接種してから6か月以上経った被験者40名に対して、①変異株に対応した修正ワクチンを打つ、②従来のワクチンを追加で打つという2つの方法で効果を試したところ、どちらの場合もベータ株、ガンマ株ともに、従来株に打った時と同じレベルの量の中和抗体ができたそうです。
特にベータ株に関しては、②の追加接種のほうが①の修正ワクチンよりも抗体の量が6割も多くなったとされています。
わずか40名の被験者でのデータですが、臨床データであることが大いに参考になりそうです。
モデルナ社では、今後も変異株に関するワクチンの有効性の臨床実験は続けており、①、②の方法以外にも、③修正ワクチンと既存ワクチンの混合ワクチンでの実験も行っているそうで、今後の報告が待たれます。

 

デルタ株へのワクチンの有効性は?

主な変異株の中でも、最も新しく見つかったデルタ株に対するワクチンの有効性については、まだまだわからないことが多いのですが、最近発表されたWHO(世界保健機構)とイングランド公衆衛生庁の見解をご紹介します。
WHOが5月25日の報告書に記した見解では、デルタ株に対して、ウイルスの増殖を抑える中和抗体の量については、ファイザー社製とモデルナ社製のワクチンでは量の低下がみられるものの、この低下はワクチンの有効性を損なうほどの低下ではないとしています。
また、発症を防ぐ効果に関しては、ファイザー社製、アストラゼネカ社製のワクチンでは、ほとんど影響がみられないとしています。
発症を防ぐ効果に関してのこの見解は、イングランド公衆衛生庁が5月22日、発表したものに基づくものと考えられますが、もう少し詳しく紹介すると、「ほとんど影響がない」としたのは、あくまで2回の接種が完了した人の場合です。
どちらのワクチンも1回目の接種後、3週間以上経つと、デルタ株への効果は33%にとどまったとされているので、速やかに2回接種を終えることが重要なようです。