新型コロナウイルスの変異株 デルタ株 後編

新型コロナウイルスの変異株「デルタ」の検疫以外の国内感染者が確認されたのが2021年4月20日。それから5月25日現在、東京都独自の調査でデルタ株の感染者は数十人にわたることが確認されました。すでにデルタ株は国内でも広がりつつあることが実感できるデータです。前編に引き続き、デルタ株の特性について紹介します。

 

日本人がデルタ株を特に警戒すべき理由とは?

新型コロナウイルスの変異株は、どれも従来株よりもパワーを増しており、より警戒すべきものですが、そのなかでも他の3つの変異株とは違い、日本人にとってもっとも脅威となるのではと言われているのがデルタ株です。
その理由を明らかにしたのが東京大や熊本大などの研究チーム「G2P-Japan」です。G2P-Japanによると、注目すべきはデルタ株の主な変異の一つである「L452R」。L452Rの変異は「HLA(ヒト白血球抗原)-A24」がつくる免疫細胞から逃れる能力があることが実験でわかったそうです。
HLA-A24は、日本人の6割が持っている白血球の型です。そのため、日本人の6割は、デルタ株に対する免疫力が低い可能性があるというのです。
従来株に関しては、欧米人よりもアジア人のほうが、症状が軽くてすむ「ファクターX」があるのでは?との説もありましたが、そういう意味では、デルタ株は、従来株とはまったく逆の現象が起きているのかもしれません。

 

重症化しやすい証拠は見つかっていないが…

デルタ株前編では、厚生労働省 新型コロナウイルス感染症対策推進本部のまとめでは、デルタ株が従来株に比べて重症化しやすいとの証拠はまだないとされていると紹介しました。けれども、6月3日、イギリスのロイターは、気になる情報を伝えています。
イングランド公衆衛生局は、アルファ株に比べてデルタ株に感染した場合、入院するリスクが高いとの見方を示したというのです。
アルファ株は、従来株よりも重症化しやすい、重症化のスピードが速いとされる変異株です。そのアルファ株よりも重症化のリスクが高いということになれば、デルタ株の脅威ははかりしれないことになります。

 

デルタ株に対する水際対策

2021年5月21日の厚生労働省の発表によると、検疫で見つかった新型コロナウイルス感染者の検体を国立感染研究所で調べたところ、デルタ株感染者は160名だったとのことです。これらの検体は、3月28日から5月7日に集められたものです。総検体数のうちデルタ株は8割以上で、滞在国はインドとネパールが多かったそうです。
こうしたことから政府は、インドなど、デルタ株が拡大している6か国からの入国者に対して、入国後10日間は国が指定する宿泊施設にとどめることにしました。なお、入国者の待機期間は、国指定の宿泊施設にとどまる10日間よりも長い14日間と定めています。