新型コロナウイルスの変異株 デルタ株 前編

新型コロナウイルスの変異株に関して、2021年5月26日の会見で、脇田隆字国立感染研究所長は、「デルタ株へ置き換わる可能性は高い」と発言しました。デルタ株といえば、インドでの猛威が衝撃的でした。デルタ株の特性についてまとめました。

 

1日の新規感染者が30万人超に!(インド)

2021年4月23日にインドで、新型コロナウイルスの新規感染者が33万人余りとなったと伝えられました(その後、新規感染者が40万人にまで急増)。
ニュース画面では、インドの医療逼迫の様子が映され、1つの酸素ボンベを2人の患者で分け合うシーンなどがありました。
このインドでの新型コロナウイルス感染の急激な拡大は、人々が密集した宗教行事の影響もさることながら、インド公衆衛生財団のギリダール・バブ教授は、新たな変異株(デルタ株)が主な原因だと指摘しました。

 

「E484Q」と「L452R」の2つの変異

デルタ株の主な変異は「E484Q」と「L452R」です。「E484Q」とは、新型コロナウイルスの外殻のスパイクタンパク質のアミノ酸の484番目がグルタミン酸(E)からグルタミン(Q)に変わったという意味。「L452R」とは、452番目がロイシン(L)からアルギニン(R)に変わったという意味です。
ここで問題なのが、319番から541番までのアミノ酸が、ヒトの細胞の表面にあるACE2受容体とのくっつきやすさに関係していることです。デルタ株は、主な2つの変異のどちらもが、ACE2受容体とのくっつきやすさに影響している箇所なので、やっかいだといえそうです。

 

デルタ株は従来株とはどう違う?

厚生労働省 新型コロナウイルス感染症対策推進本部のまとめによると、デルタ株は従来株に比べて感染力が強い可能性があるとしています。ただし、まだまだデータ不足などで明確な数値は示せていません。
研究者の間でもさまざまな見解があり、たとえば、京都大学の西浦博教授は、5月19日の厚生労働省の専門家会合で「デルタ株はアルファ株よりも感染力が強く、世界中で置き換わる可能性が高い」と述べました。さらに、国内でアルファ株が拡大するには2か月を要したが、もしデルタ株が入ってきたら、もっと短い間に拡大するとの考えを示しました。
また、前述の新型コロナウイルス感染症対策推進本部のまとめでは、デルタ株は従来株よりも重症化しやすいという証拠は今のところないが、従来株に比べてワクチンの有効性を低下させる可能性はあると指摘しています。

 

60の国や地域に感染が拡大!

2021年5月25日のWHO(世界保健機構)の報告によると、デルタ株はアメリカやイギリス、フランスなど60の国や地域で感染が確認されたそうです。
WHOは、アルファ株、ベータ株、ガンマ株に続き、デルタ株も「(感染拡大などが)懸念される変異株」に加えています。