新型コロナウイルスの変異株について 概要①

新型コロナウイルスの変異株について、ぜひ知っておきたい、その特徴を2回にわたって、解説します。

 

新型コロナウイルスの変異スピードはインフルエンザウイルスの半分!

新型コロナウイルス変異株の出現で、コロナ禍の出口がなかなか見えず、憂鬱な気分になりがちですが、ウイルスの変異株が出現するのは新型コロナウイルスに特有のことではありません。
新型コロナウイルス感染拡大前、冬になると必ず大流行していたのがインフルエンザですが、インフルエンザウイルスも新型コロナウイルスと同じように常に変異しています。
毎年、冬前にインフルエンザウイルスのワクチン接種をしていた人も多いと思いますが、ワクチンは、その年のインフルエンザウイルスの流行を予想して毎年、内容を変えて対応しているそうです。
ちなみに、新型コロナウイルスは2週間に1か所、変異していると言われています。そのスピードに驚きますが、それでもインフルエンザウイルスの変異スピードの半分だとか。これまでも私たちは、あまり意識せずにハイスピードで変異するインフルエンザウイルスに対処してきていたのです。

 

新型コロナウイルスの変異株がやっかいな理由

変異スピードは、インフルエンザウイルスの変異に劣るものの、私たちにとって新型コロナウイルスの変異株が脅威なのには理由があります。
①インフルエンザと違って、新型コロナ感染症には特効薬がない。
②インフルエンザのようにワクチンが普及していなかった。
③スパイクたんぱく質の変異。
一般に、ウイルスが変異しても、感染力や重症化しやすいといった病毒性、ワクチンを打っても抗体ができにくくなる免疫逃避、薬が効きにくくなる耐性獲得といった特性が変わらなければあまり問題はありません。
ところが新型コロナウイルスの変異では、スパイクたんぱく質の変異があり、これが感染力を強くしているのです。
ウイルスは遺伝子情報をたんぱく質が包んだだけの構造と前回説明しましたが、もう少し詳しく説明すると、外殻のたんぱく質の形は、スパイクのようにとげとげがついています。このとげのようなスパイクが、ヒトの細胞表面にあるACE2受容体とぴったりくっつくことで、ウイルスは細胞内に入っていきます。
新型コロナウイルスの変異では、このスパイクたんぱく質がACE2受容体にくっつきやすくなるように変異しているため、感染力が強くなっているのです。どのくらい強くなったのかは正確にはわかっていませんが、従来株に比べると、最大1.6倍~1.7倍になっているのではとの推測もあります。
そのほか、変異した箇所によっては、重症化するスピードが速い、高齢者だけでなく若年層でも発症・重症化しやすいといった傾向がみられるようです。